日本でも「フェルメール展」が開催されるほど人気がある作家であり、アート初心者の方の取っ掛かりになることも多いフェルメール。
今回はそのフェルメールについてご紹介。ぜひ目次の気になるところをチェックしてみてください。
※ページ内の解釈は全て管理人個人の見解に基づいております。ご認識の上、記事をお楽しみいただけますと幸いです。
フェルメールの概要
パブリックドメインQより引用
ヨハネス・フェルメール(Johannes Vermeer , 1632-1675)は、オランダのデルフト出身でバロック期を代表する画家です。本名はヤン・ファン・デル・メール・ファン・デルフト(Jan van der Meer van Delft)です。
レンブラント・ファン・レインやフランス・ハルスと並ぶオランダの黄金時代の代表画家です。
1600年代の西洋の歴史的背景
オランダ共和国が1588年に独立を果たし、カトリックからプロテスタントを奉ずることになり、独立後の中枢を担う層も王侯貴族から富裕な市民階層になりました。そういった買い手がわからない状況にありながら、総制作点数はとても多く、画家の生き残り競争は熾烈を極めていました。
フェルメールの何が凄い? フェルメールの特徴
題材のセンス
歴史的な背景と競合を鑑みて、時代の波にとらわれずに自身が選ぶべき題材を選定していました。物語画が流行っていた当時に風俗画を中心に描くようになったのもフェルメールのセンスを感じます。また構図について、「女性一人」の作品が多く、「フェルメールらしい」構図を見つけ出そうとする姿勢も垣間見えます。
計算された対象物と色
例えば作品の中によく登場する地球儀は、当時のオランダ人の世界に対する関心を代弁していることを風刺していたりと、作品の中に登場するものが何かを表現しようとしていることが多いのも、フェルメールのファンが多い所以かもしれません。
また、光の細かい表現が美しく、色の繊細さを楽しむこともおすすめです。
遠近法
フェルメールの絵にはフォーカルポイント(絵の中心となるポイント)に、小さい穴が開いていたりする作品があり、そこから計算して幾何学的遠近法を用いられていることが見て取れます。
絵に立体感があるように感じられるのは計算した遠近法によるものでもあります。
またただの遠近法ではなく、消失点まで計算されているのも評価されています。
フェルメールの生涯
《誕生から美術家になるまで》
オランダのデルフトで生まれたフェルメールは、画家になるための修行をしました。当時のオランダでは6年修行をし、その絵を販売するために組合(聖ルカ組合)に所属する必要がありました。
フェルメールもそこに所属し、流行に乗りまずは物語画を描くようになりましたが、時代の流れをいち早く察知し、後に風俗画家としての転身を遂げることとなります。
「マルタとマリアの家のキリスト」 (1654)22歳
作品名 | 製作年 | 所蔵先 |
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マルタとマリアの家のキリスト | 1654~55年 | エディンバラ、ナショナル・ギャラリー |
まだ若い最初期は宗教画を描いていました。宗教画で他の画家もよく描かれている構図をフェルメールらしさをもって描いています。晩年には見られない鮮やかな色遣いが特徴的です。
「窓辺で手紙を読む女」 (1659)26歳
作品名 | 製作年 | 所蔵先 |
---|---|---|
窓辺で手紙を読む少女 | 1658~59年 | ドレスデン、絵画館 |
風俗画に転身して間もない作品ですが、「人物・部屋の片隅・窓」というフェルメールらしい構図、確立されつつあるスタイルが汲み取れる興味深い作品です。
有名な話ですとこの絵の右上の箇所にほかの作品にも登場する「キューピッド」が描かれていたが、それが塗りつぶされていたことがX線検査により判明しています。キューピッドを塗りつぶしてまで描かれた右側の緑のカーテンに思いを馳せます。
「真珠の耳飾の少女(青いターバンの少女)」 (1665)33歳
作品名 | 製作年 | 所蔵先 |
---|---|---|
真珠の耳飾の少女 | 1665~66年 | ハーグ、マウリッツハイス美術館 |
フェルメールの代表作品の一つ。「トローニー」と呼ばれる、胸から上の人物を描いた絵です。色遣いや光の加減や表情のとらえ方など、ここまで見ていただいた方は「フェルメールだな・・」と感じていただける作品だと思います。
顔以外の箇所は青と黄でシンプルにまとめつつ、焦点を当てた顔は美しく輝いています。つい吸い込まれてしまうような美しい作品となっています。
《晩年》
晩年になるとフェルメールにも変化がありました。洗練された技術が垣間見える作品も描き上げる一方で、以前ほどの魅力を感じ取れない作品も増えました。背景には本人の技術以外にも考えられることとして、顧客の好みの変化があったのかもしれません。
色遣いの変化や光の加減、輪郭線の書き方に変化を感じられる部分がありましたが、一方で試行錯誤をしていたとも読み取れるでしょう。晩年になっても顧客の好みを汲もうとするフェルメールには学べるところがあります。
フェルメールをさらに楽しむ
たくさん紹介させていただきましたが、まだ物足りないという方に向けておすすめの書籍を紹介させていただきます。
良ければ読んでみてください
もっと知りたいフェルメール 改訂版 生涯と作品 (アート・ビギナーズ・コレクション)
出版社:東京美術(2017/7)
1,980円(税込)
中野京子と読み解く フェルメールとオランダ黄金時代
出版社:文藝春秋(2022/05)
1980円(税込)
フェルメールの作品が楽しめる美術館
世界中から愛されているフェルメールの作品は世界中に貯蔵されています。
興味がある方は海外旅行の際に各地の美術館にお立ち寄りいただけると楽しみが増えるかもしれません
- アメリカ:イザベラ・スチュアート・ガードナー美術館
- アメリカ:ナショナル・ギャラリー
- アメリカ:フリック・コレクション
- アメリカ:メトロボリタン美術館
- イギリス:宮殿王室コレクション
- イギリス:ケンウッドハウス
- イギリス:ナショナル・ギャラリー
- オランダ:国立美術館
- オランダ:マウリッツハイス美術館
- ドイツ:絵画館
- ドイツ:国立美術館
- ドイツ:シュテーデル美術館
- ドイツ:美術史美術館
- フランス:ルーヴル美術館
日本で見る方法は・・・
「フェルメール展」が定期的にどこかの美術館で開かれています。
お住まいに近い美術館でぜひ探してみてください。
フェルメールの小話
残された妻、カタリーナは自己破産を申し立てていた⁉
残された文章によると、晩年フェルメールは無収入でお金に困っていたそうです。当時の絵は今と比べると遥かに評価が低かったのでしょう。今の時代のフェルメールの評価を、当時のフェルメールが見ると腰を抜かすでしょう。。
まとめ
ここまでフェルメールについて解説させていただきましたが、いかがでしたでしょうか。
引き続き皆様の為になる情報を発信していきますので、ブックマークやお気に入り登録いただけますと幸いです